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TCAP’s VIEW & INSIGHTS #004 / ソーシャルビジネス戦略論(前編) - 社会的価値を最大化する

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ソーシャルビジネスの戦略とは
営利企業における戦略はこれまで長い年月をかけ、そして今日も尚、様々な学者や経営者、コンサルタントによって議論され、新たなコンセプトが提示され続けている。

J.B.バーニーによると、戦略とは「企業が考えた、競争に成功するためのセオリー」だという。
これはもちろん”営利企業における「戦略」の定義”ということになる。

では、ソーシャルビジネスにも同じ事が言えるだろうか。

答えはNoだ。

ソーシャルビジネスとは、社会問題の解決を目的としたビジネスであり、競争に成功することを目的とするわけではないし、競合に勝つか負けるかと言った価値観の中に存在するものでは当然無い。だとすると、ソーシャルビジネスにおける戦略とは一体何なのだろうか。

ソーシャルビジネスの戦略とは
営利企業の戦略と異なり、ソーシャルビジネスにおける戦略は未だ十分な議論がなされているとは言えない。
 
ソーシャルビジネスの戦略について、論理的なプロセスで戦略を定義し、自社の戦略について明確な説明をすることができるNPO代表、社会的企業CEOがどれだけいるだろうか。

あるいは、ソーシャルビジネスに関する戦略について明確に説明した書籍がどれだけ存在するだろうか。

この世の中に、ソーシャルビジネスの戦略について語ることができる人物がどれほどいるだろうか。

残念ながら、ソーシャルビジネスに特化した形でその戦略をまとめた書籍は多くないし、ソーシャルビジネスの戦略を論理的に定義している人は少ないだろう。
 
また、社会問題の解決に取り組むならば、今目の前に起きている状況を捉え、いち早く困った人へ手を差し伸べるべきであって、戦略は必要ない、という人もいるかもしれない。当然、このような目の前の人を如何に救えるかに重点を置いた活動は重要であるし、今後もその必要性が失われることはない。
 
しかし考えて見て欲しい。ソーシャルビジネス事業者(本稿ではソーシャルビジネスを実施する法人や団体を総じてこう呼ぶ)が本当の意味で社会問題を解決したいと考えるのであれば、どうすれば社会問題を解決することができるのかを、長期的視野に立って検討する必要があるのではないだろうか。
 
ソーシャルビジネス事業者として、何らかのミッションを掲げ、ビジョンを描いているのであれば、そのミッションを達成するために如何に事業を進めていくか、その「戦略」を考えることは、ソーシャルビジネス事業者であるNPOや社会的企業の経営者の責任と言えないだろうか。
  
こうした考えを前提とし、本稿では、世の中でまだ語られることの少ないソーシャルビジネスの戦略について、我々なりの考え方を示していきたい。
 
戦略の論点を定義せよ― 社会的価値最大化が戦略の論点
冒頭で述べた通り、人によって表現や定義の差はあれど、概ねビジネスにおける戦略とは、「競合に勝ち成功する」為のもの、との共通認識があるはずだ。
事業戦略が競争戦略と呼ばれたりしていることを考えると、やはりビジネスにおける戦略は、競合との競争に勝つ事を念頭に置いていることになる。(もちろん「ブルーオーシャン戦略」のような考え方もあるが)

しかし、ソーシャルビジネスにおいて、競合に勝つことは必ずしも重要なことではない。
むしろ、社会問題解決の為ならば同業他社と協力し、時に他者に自らのノウハウや知見を共有・移転することすらあり得る。

つまり、ソーシャルビジネスの最上位の目的は、社会問題の解決であり、より大きな社会的インパクトを生み出すことである。ソーシャルビジネスは、通常のビジネスが追い求める経済的価値(金銭的な利益)ではなく、社会問題解決において価値あること=「社会的価値」の最大化を追求するのだ。
 
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これこそが、ソーシャルビジネス事業者にとっての「戦略の論点」ということになる。

では、ソーシャルビジネス事業者は、営利企業が追い求める経済的価値に全く無関心でいても良いのだろうか。
これは難しい問題ではあるが、ソーシャルビジネスがビジネスを通じた社会問題解決を念頭に置く以上、やはり経済的価値を完全に無視するわけにはいかないはずだ。

ソーシャルビジネスを行う経営者に求められるのは、本当の意味で「社会的価値最大化」を考えることだ。
自社の持てるリソースすべてを社会貢献活動に費やすことは、必ずしも「社会的価値最大化」に繋がらないこともある、ということを認識しなければならない。
(こうなると最早、”ソーシャルビジネス”と呼べなくなる可能性すらある)

<次のページへ続く「社会的価値最大化と経済的価値最適化」>



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