VisionSpring / BOP層に眼鏡を届ける – ソーシャルビジネスにおける事業領域絞り込みの重要性 | TCAP SOCIAL BUSINESS REVIEW online

VisionSpring / BOP層に眼鏡を届ける – ソーシャルビジネスにおける事業領域絞り込みの重要性

発展途上国経済・インフラ, 社会問題, 貧困・健康問題
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眼鏡で途上国の問題解決 VisionSpring
眼鏡、コンタクトレンズ、レーシック…視力を矯正する方法は時代とともに進化してきた。
日本では視力が悪くなればコンタクトレンズの利用は当たり前だし、まして眼鏡となれば、すぐにでも購入することが出来る。
 
しかし、開発途上国の中にはそう言う訳にはいかない国もたくさんある。
レーシック、コンタクトレンズはおろか、眼鏡すら手に入らない人々もいるのだ。
 
そして、途上国の一部の人々にとっては、視力の低下が生活水準の低下に結びつくことがある。
「視力が悪ければ眼鏡を買えばよい」という我々の常識が通用しない地域があるのだ。

例えば、縫製業者、機械工等、細部にまで気を遣う仕事に就く人々とって、”良く見えること”は非常に重要なことだ。視力が悪ければ、仕事の成果も低下してしまう。また子供たちにとっては、視力が悪いままでは勉強もままならない。勉強が出来なければ、仕事に就くことも難しくなる。しかし、視力が悪くなっても高額な眼鏡には手が出ない。
 
こうした状況を変えるべく取り組みを進める組織がある。
アメリカのVisionSpring Inc.だ。
VisionSpring
 
 
VisionSpringは、途上国のBOP層向けに、低価格の眼鏡を販売する事業を行っている。
その事業にはいくつか特徴がある。
その一つが流通方法だ。

彼らはHub-and-Spokeアプローチと呼ばれる手法を採用している。
これは、optical shop(眼鏡屋)をハブとし、その周辺のコミュニティにvision entrepreneur(ヴィジョン・アントレプレナー)と呼ばれるスタッフが出向くやり方だ。ハブであるoptical shopには検視医がおり、眼鏡を購入する事が可能。vision entrepreneurはコミュニティに出向いて、視力スクリーニングを行ったり、目のケアの大切さ、視力矯正の大切さを教育する役目を担う。これは”Vision campaign”と呼ばれ、地域の学校や教会、コミュニティセンターで、臨時の視力検査室や眼鏡販売コーナーを設ける活動である。

VisionSprignのターゲット顧客である途上国のBOP層は、何年も視力が悪い状態が続くと、視力回復をあきらめるケースが多く、視力が悪い⇒眼鏡やコンタクトを購入する、といった我々にとって当たり前のことが出来ない環境にある。途上国にももちろん眼鏡屋は存在するが、販売価格が高過ぎる上、購入前に精緻な眼科検診が必要となる為、VisionSpringのターゲット顧客には向かない。こうした供給側と需要側のギャップを捉え、ビジネスとして取り組みを始めたのがVisionSpringである。
 
VisionSpringはその社会的価値を最大化する為に、積極的なパートナーシップ戦略をとっている。
他の多くの非営利組織等と手を組み、現時点で26の途上国でVisionSpringの眼鏡が販売されているという。
 
 
VisionSpringに見る事業絞り込みの重要性
ここまでがVisionSpringの大まかな活動の概要であるが、注目したいのは彼らの事業領域に対する考え方だ。
 
VisionSpringがターゲットとするBOP層(base of the pyramid)は、一般的には年間所得が3000ドル以下の人々を指す。
世界全体でおよそ40億人がこの層に該当すると言われている。
こうしたBOP層の最大の問題は、その定義が示す通り、低い所得水準にある。
もちろんこの「低所得」には国や地域によって様々な異なる要因がある。
 
行政機関やNPO、そして企業もビジネスとしてこの問題に取り組み始めており、VisionSpringもそのうちの一つと捉えることが出来る。
 
VisionSpringは、ホームページで自社を”not for profit organization”と称していることから、営利を目的としないソーシャルエンタープライズ(社会的企業)と言って良いだろう。そんな彼らの最上位の目的は、おそらく「BOP層の低所得の問題を解決すること」であると推察できる。
これはホームページ上で彼らが、以下のように謳っていることからも言える。

VisionSpring was founded on a very basic principle:”If you can’t see, you can’t work.”…(中略)…“If you can’t see, you can’t learn”.
(「視力が悪ければ、働くこともできない、学ぶこともできない」という根本的な方針・信念に基づいてVisionSpringは設立された…)

視力低下に起因する収入、教育水準の低下が、彼らが対象とする社会問題の領域といって良い。

もちろんBOP層の低所得問題には、様々な要因があり、「視力の低下」は多くの要因の一要素に過ぎない。
例えば、以下の図に示す様な要因が考えられる。

※ちなみに以下の図はTCAPが提唱する社会問題構造化アプローチに基づいて作成。本アプローチについてはリンクを参照
TCAP’s View & INSIGHTS #3 / 社会起業家に求められる”問題の構造化アプローチ” – 「社会問題ツリー」を活用する
 
TCAPCS_Column_VisionSpring_pic1

図を見て頂ければ分かるように、BOP層の低所得問題を解決するならば、他にもさまざまな打ち手がある。
しかしVisionSpringは、BOP層に眼鏡を販売する、というアプローチを採用したのだ。
 
もしかしたら、眼鏡をかけるだけでは所得水準が向上しないケースもあるかもしれない。
例えば、そもそも職業スキルがついていない場合、他に健康に問題があって働くことが出来ない場合等が考えられる。
しかし、VisionSpringは、こうした他の打ち手には手を出さず、あくまで「眼鏡」に焦点をあてている。
 

<次のページへ続く「なぜ絞り込むのか 対症療法のワナにはまらない」>



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