VisionSpring / BOP層に眼鏡を届ける – ソーシャルビジネスにおける事業領域絞り込みの重要性 | TCAP SOCIAL BUSINESS REVIEW online

VisionSpring / BOP層に眼鏡を届ける – ソーシャルビジネスにおける事業領域絞り込みの重要性

発展途上国経済・インフラ, 社会問題, 貧困・健康問題
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なぜ絞り込むか – 対症療法のワナにはまらない
ソーシャルビジネスにおいて、このような事業領域の絞り込みは非常に重要なポイントである。
それは、以下の様な二つの理由による。
 
①複雑かつ大きな社会問題は要素に分解してアプローチしなければ、根本的な解決を図る事は難しい。
 ソーシャルビジネスが対象とする社会問題は、複雑かつスケールの大きい問題が多い。
 その為、大きな社会問題を要素に分解してアプローチする事が重要である。
 複雑かつ大きな社会問題をいくつかの要素に分解して、自社が取り組むべき分野を決めるべきで、
 いきなり大きなテーマに取り組み始めると、結果的に根本的な問題解決にならない可能性がある。
 
②社会問題を要素に分解したら、多様なプレイヤーの参画により問題解決にあたるべき。
 自社の取り組み範囲はケイパビリティを有する領域に思い切って絞り込む。

 ソーシャルビジネスにおいては、多様なプレイヤーによるコラボレーションが非常に重要である
 複雑な社会問題解決を一挙に担うことが出来るスキル、ノウハウ、経験を有したプレイヤーは存在しない。
 多様なプレイヤーが各々の得意分野で最大限に力を発揮することで、より大きな社会問題を解決することができる。
 その為、自社が取り組むべき分野は思い切って絞り込み、それ以外の分野は他者の参画を促すことも重要。





①複雑かつ大きな社会問題は要素に分解してアプローチしなければ、根本的な解決を図る事は難しい。
例えば、あなたはある日突然「BOP層の低所得の問題」を解決せよ、というミッションを与えられたとする。
あなたはまずBOPとは何かを調べ、”base of the pyramid”の事であると理解し、世界全体で約40億人が年間3,000ドル以下の所得で暮らしていることを知る。
これを知ったあなたは、「低所得に苦しんでいる = お金が足りない = 募金/支援物資」と言う思い付きにしたがって、全国的な募金キャンペーンを企画することにした ー

実際によくあるケースではないだろうか。

決してこのアプローチが間違っていると言っているわけではない。
ただ、このアプローチは”数あるアプローチのうちのほんの一つ”である事を理解して欲しい。
アプローチが他にもたくさんある事を理解した上で、論理的プロセスに則って「募金キャンペーン」を選択したのであれば問題ない。しかし、問題の”表面”しか捉えることが出来なかった結果、他にたくさんのアプローチがある事を気付かなかったのであれば問題だ。

既に述べたように、BOP層の低所得問題は、様々な要因が複雑に絡み合って発生しているはずだ。
この問題の構造を理解しようとせずに、「問題は所得が低いことだ」と、問題を表面的に捉えて満足していては、
いつまでたっても、低所得の根本的原因が対処されず、”対症療法”を続けることになってしまう。

お腹が痛い時にとりあえず対症療法として痛み止めを処方することも大切だが、お腹が痛い原因が細菌であることを突き止めて、抗生物質を投与し根本的な治療を行うことはもっと重要だ。
社会問題にも対症療法と、根本的治療(原因療法)の両方が必要とされるのだ。

そして、根本的治療を行うためには、問題を要素に分解して構造化する必要がある。
大きなテーマ(BoP層の低所得)に囚われると、「対症療法の罠」に陥る可能性が高い。

VisionSpringの取り組みは極めて限定的な領域ではあるが、「低所得」に対して表面的な支援は行わず、
「低所得」 ⇒ 「収入の高い安定的な仕事に就けないから」 ⇒ 「十分に教育を受けられないから」 ⇒ 「視力を矯正するすべが無く勉強もままならないから」…と言ったようにより根本的な問題にアプローチしようとしていることが分かる。

もちろん教育が十分でない原因としては、学校の整備が不十分、教師・教材が不足している等他の要素も考えられるが、
問題を構造化してより根本的・本質的な部分にアプローチすることの重要性はお分かり頂けたと思う。(VisionSpringが実際にこのような思考をしたかは不明だが)

②社会問題を要素に分解したら、多様なプレイヤーの参画により問題解決にあたるべき。
 自社の取り組み範囲はケイパビリティを有する領域に思い切って絞り込む。

問題を構造化することで、より根本的なアプローチをとることの重要性は理解して頂けたはずだ。
ただ、問題を構造化することが出来ても、全ての要素に一つの組織だけでアプローチできる訳はない。
多様な要素で構成される社会問題は、その解決の為に多様なケイパビリティが必要となる。
 
一つの組織が多様なケイパビリティを有しているのであれば良いのだが、そういう訳にもいかない。
VisionSpringのFounderであるJordanは、New England College of Optometry*の卒業生であり、検眼や視力測定の分野におけるケイパビリティを有していたと想定される。
*optometry : 検眼

VisionSpringは自らの強みである検眼・視力の分野に絞り込み、BoP層の低所得問題に取り組み始めた。
一方で、図にあるような「学校の整備」、「教師不足の解消」と言った分野には手を出していない。

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途上国で学校の整備を行うNPOは多く、教師の質的向上を図る「国境なき教師団」のような組織もある。
各組織が自らの得意分野で活動する事により、その集合体として結果的に、BOP層の低所得問題という一つの大きな社会問題テーマに対処できるのだ。

総花的に社会問題の全ての原因を自分一人で潰そうと考える必要はない。
自分が最も力を発揮できる分野に、思い切って絞り込みをかけることが重要だ。
 
この事業領域の絞り込みは論理的なプロセスで行うと良い。
事業領域の絞り込み方法の詳細は、TCAPの提唱する社会問題構造化アプローチの記事を参照頂きたい。
TCAP’s View & INSIGHTS #3 / 社会起業家に求められる”問題の構造化アプローチ” – 「社会問題ツリー」を活用する

まとめ
・社会問題解決、ソーシャルビジネスにおいて事業領域の絞り込みは非常に重要

・そもそも社会問題解決を図る際には、大きな社会問題テーマを要素に分解して取り組むことで、より根本的なアプローチをとることが重要
 (ただし、根本的アプローチに加えて、対症療法的なアプローチの重要性は変わらない。
  例えば飢餓の根本的な解決を図る前に、目の前の命を救うための食糧支援がまず必要な場合など)
・そして分解された各要素に対しては、一組織ではなく、それぞれに強みを持った多様なプレイヤーが参画すると良い
・自社は自ら強みを持つ領域に思い切って絞り込むべき



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