TCAP’S VIEW & INSIGHTS #005 ソーシャルビジネスの6つのパターンとは / パターン化によって新たなアイデアを | TCAP SOCIAL BUSINESS REVIEW online

TCAP’S VIEW & INSIGHTS #005 ソーシャルビジネスの6つのパターンとは / パターン化によって新たなアイデアを

TCAP, ビジネスモデル/戦略/組織
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TCAPの考えるソーシャルビジネスモデルのパターン
TCAPの定義では、ソーシャルビジネスモデルのパターンは、以下の図で表すことができる。

パターン図

1.価値一致型
図にある通り、「1.価値一致型」は社会価値提供者と、顧客価値提供者が同一で、かつ、社会問題解決の対象者と顧客も一致しているケースだ。
例えば、途上国の貧困層に対して小分けにした粉ミルクを販売するネスレはこの「価値一致型」と言える。
粉ミルクを購入する人々は顧客であり、小児の栄養・健康問題という社会問題に悩む親でもある。
この場合、フレームワークの「提供する顧客価値」と「提供する社会価値」を分けて記述することは難しい。
また、顧客価値、社会価値共に、提供者はネスレである。


2.直接寄付型
直接寄付型は、社会価値提供者と顧客価値提供者は同一だが、顧客と社会問題解決の対象者が異なる場合、かつ収入が寄付として認識される場合だ。

このパターンはRoom to Readという団体を例にとると分かりやすい。
Room to Readは、個人や法人から寄付を募り、それを原資に途上国で図書館・図書室の設置、学校建設等の活動を行っている。

この場合、フレームワークの顧客の欄には”寄付者”が記述され(この部分は後程詳しく述べることとする)、社会問題解決の対象者には、途上国で教育問題に困っている子供たちが記述される。
顧客(寄付者)と社会問題解決の対象者は異なるはずだ。
ただ、この場合は、顧客価値提供者(寄付収入の場合「”顧客価値”と”寄付金”の交換」が成り立っているかはケースによるが、ここでは一旦便宜的に寄付を募る主体を「顧客価値提供者」と呼ぶ)と、社会価値提供者は共にRoom to Readだ。
もちろん、Room to Readは図書館や学校建設の為に現地NPOと協働しているはずだが、これはあくまでコラボレーションで、現地NPOはパートナーであり、主体者はRoom to Readである。

このケースにおいては、収入の種類は事業収入ではなく、寄付金となる。
ここでは、顧客(=寄付者)が支払う金銭はあくまで寄付である。
コーズマーケティングのように、顧客が商品の対価として支払、顧客価値提供者がその販売収益の一部を寄付するモデルとは明確に異なる為、顧客が”直接”寄付をする、と言う意味で、「直接寄付型」と呼びたい。


3.単独コーズマーケティング型
コーズマーケティングとは、ある商品を購入することで社会貢献につながることを顧客に対して訴えかけるキャンペーンのことを指しており、例えばボルヴィックの1L for 10Lが有名だ。ボルヴィック(キリンビバレッジ)はユニセフと協働でこのプログラムを実施している。

消費者が対象となるミネラルウォーターを購入すると、売上の一部がユニセフに寄付され、途上国の水問題解決に活用されることになる。
顧客に対して顧客価値を提供する主体はボルヴィック(キリンビバレッジ)であるが、社会価値を提供する主体はユニセフという訳だ。
ただこの場合、社会価値提供者と顧客価値提供者は一致していない為、”単独”コーズマーケティングとは言えない。

単独コーズマーケティングとは、例えばNPOがある商品を販売し、その売上の一部を原資として社会問題解決を実現するような場合、つまり顧客価値提供者と社会価値提供者が一致しているが、顧客と社会問題解決の対象者が一致していない場合で、なおかつ収入が顧客による直接寄付でない場合を指す。


4.バリューチェーン・ビルトイン型
バリューチェーン・ビルトイン型は、社会問題解決の対象者と顧客が異なり、かつ、価値提供者は一致しているパターンの一つで、営利企業に良く見られる自社事業のバリューチェーンの中で社会問題の解決を目指すやり方だ。

例えば、ウォルマートの例が有名だ。
ウォルマートは、サプライヤーと協働で温室効果ガス削減に取り組み、地球環境問題の改善に寄与している。
(この場合、社会問題解決の対象者は全世界の人々、もしくは地球ということになるが)

この取り組みは、社会価値を生み出す主体もウォルマートであり、顧客価値を生み出す主体も同じくウォルマートだ。
一方、社会問題解決の対象者は”全地球”、顧客はウォルマート製品を購入する消費者となり、こちらは一致していない。


5.コラボレーション・直接寄付型
コラボレーション・直接寄付型は、社会価値提供者と顧客価値提供者が異なり、なおかつ社会問題解決の対象者と顧客が異なるパターンの一つだ。
”直接寄付型”である為、顧客=寄付者となり、パートナーが寄付を募り、それをNPO等の社会価値提供者へ更に寄付するパターン等が考えられる。
例えば、より大きな寄付団体や財団等が人々から寄付を募り、その寄付金を社会価値提供者へ振り向けるようなケースが考えられる。

繰り返しになるが、ここでいう直接寄付とは、顧客(=寄付者)が金銭を”寄付”と認識して、顧客価値提供者へ手渡すことを意味している。
顧客が金銭を商品やサービスの”対価”と認識して顧客価値提供者へ手渡し、顧客価値提供者がその金銭の一部を”寄付”として、
社会価値提供者へ手渡すケースは”間接寄付”と言える。


6.コラボレーション・コーズマーケティング型
最後にコラボレーション・コーズマーケティング型であるが、これは、「3.単独コーズマーケティング型」で取り上げたボルヴィックのケースが該当する。
ボルヴィックの1L for 10Lでは、顧客価値提供者はボルヴィック(キリンビバレッジ)、社会価値提供者はユニセフである。
また、社会問題の解決の対象者は、途上国で水問題に悩む人々、顧客はミネラルウォーターの購入者と言うことになる。

顧客が支払ったミネラルウォーターの対価は、ボルヴィック(キリンビバレッジ)を通じて、寄付としてユニセフに送られる事になる為、
前述の直接寄付型とは意味合いが異なる。

パターン図2

以上がTCAPが考えるソーシャルビジネスモデルのパターンである。
これらのパターンで世の中のほとんどのソーシャルビジネスを説明することができるはずだ。

ただ、実際のソーシャルビジネスは多くのプレイヤーが関わって成り立っていることが多い。
TCAPのソーシャルビジネスモデルのパターンはあくまでベースとして、場合によって柔軟に運用する必要があることを付け加えておきたい。


ソーシャルビジネスモデル・パターンをどう使いこなすか
このようなソーシャルビジネスモデルのパターンを知っておくことで、
あなたが新たなソーシャルビジネスを立ち上げる際に、ソーシャルビジネスモデルをデザインする助けになるはずだ。

例えば、ある社会問題を解決するソーシャルビジネスを、価値一致型のモデルで最初に思いついたとする。
解決したい社会問題や対象者は変えずに、単独コーズマーケティング型のモデルはできないだろうか、あるいは、企業と協働でコラボレーションコーズマーケティング型のモデルは実現できないだろうか… こうした試行錯誤をするのに、ここで紹介した6つのソーシャルビジネスモデル・パターンを理解していると、その試行錯誤のスピードが格段に速まるはずだ。

また、他社のソーシャルビジネスを理解する際にも、この6つのパターンに当てはめて考えてみても面白いだろう。
ボルヴィックの1L for 10Lが取り組む社会問題解決を、別のパターンで実現すると一体どのようなソーシャルビジネスが生まれるだろうか、などと考えてみると新たなアイデアが生まれるかもしれない。

(文/五十嵐裕一)



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