TCAP’S VIEW AND INSIGHTS #004 / ソーシャルビジネス戦略論(後編) – 戦略策定プロセスと社会価値最大化の4つの戦略方向性 | TCAP SOCIAL BUSINESS REVIEW online

TCAP’S VIEW AND INSIGHTS #004 / ソーシャルビジネス戦略論(後編) – 戦略策定プロセスと社会価値最大化の4つの戦略方向性

TCAP, ビジネスモデル/戦略/組織
他の記事を見る(記事一覧へ)≫

TCAP_Column_SB_strategy_eyecatch

「ソーシャルビジネスの事業戦略立案」とは、「如何に社会価値最大化を図るか」

社会価値最大化の戦略方向性を策定するプロセスはシンプルだ。
「選択した社会問題とその打ち手の領域において、如何に社会価値を最大化すべきか」
これが論点になる。

しかし、この論点をそのままに、正面から向き合っては中々答えは出ない。まずは論点の分解が必要になる。

”社会価値の最大化”を要素分解するとどうなるか。TCAPは、社会価値を「提供価値のレベル」と「価値提供の範囲」に分解する方法を提唱したい。言わんとすることは非常にシンプルで、「社会価値の大きさ」=「提供する社会価値のレベル」×「社会価値を提供する範囲」というロジックに基づいている。一般的に考えると、提供する社会価値のレベルが高ければ高いほど、そして、提供する範囲が広ければ広いほど社会価値は大きくなる、ということになる。

いずれにしても、提供価値のレベルと価値提供の範囲の掛け算で、価値の大きさは決まると考える。
この2軸でマトリクスを組むと、ソーシャルビジネスの事業戦略における戦略方向性が見えてくる。

TCAP_Column_SB_Strategy_4strategy_3

マトリクスに登場する4象限は次の通り説明することができる。

①高レベル・広範囲戦略

・高レベルな社会価値を、広範囲に提供することで、社会価値最大化を図る戦略。提供する価値は高レベルであり、専門知識や技術等が必要とされることが多い。なおかつ、広範囲に商品やサービスを提供する為、一般的に高コストで、必要とされる経営資源も大きい。

②高レベル・限定範囲戦略

・高レベルな社会価値を、限定された範囲に提供することで、社会価値最大化を図る戦略。提供する価値は高レベルであり、専門知識や技術等が必要とされることが多い。しかしながら、価値を提供する範囲は限定されている為、一般的には地域に密着した密度の高いサービスを志向するソーシャルビジネスモデルや、立ち上げ当初で限定範囲への浸透を図るソーシャルベンチャーが採用する戦略。

③限定レベル・広範囲戦略

・限定レベルの社会価値を、限定された範囲に提供することで、社会価値最大化を図る戦略。提供する価値は限定されており、一般的には特に専門性の高い知識や技術は求められないことが多い。しかしながら、価値提供の範囲は広範にわたる為、優れたデリバリーチャネル、ディストリビューション網が必要となる。グローバル企業がBOPビジネスで、廉価版の製品や小さなポーションの製品を途上国の広い範囲に提供する場合などで、この戦略を採用することがある。

④限定レベル・限定範囲戦略

・限定レベルの社会価値を、限定された範囲に提供することで、社会価値最大化を図る戦略。提供する価値のレベル、範囲ともに限定的である為、専門知識や大きな経営資源を必要とせず、クイックに立ち上げることが可能なことが多い。立ち上げ当初のソーシャルベンチャーや、少人数で運営する非営利団体、③で触れたグローバル企業のBOPビジネスの導入当初に採用されることがある戦略。

社会価値の”最大化”を念頭に置くと、①の高レベル・広範囲戦略のみが正解であるように見える。レベルの高い価値提供を広範囲に行えば理論的には”最大化”が実現されそうだ。しかし、これは全てのソーシャルビジネスにあてはまる訳ではない。
4つの戦略方向性のうち、どれを採用すべきかは、実は次の3つの要素で決定される。

TCAP_Column_SB_Strategy_3elements_4

一つ目は、ソーシャルビジネスを実行する組織の”capability”だ。Capability、つまり組織に高レベル化や広範囲化の能力があるか否かを判断するのだ。組織にその能力がない場合、高レベル化や広範囲化をあきらめ、他の現実的な戦略方向性をとるか、何らかの手段でこの能力を獲得し(例えば、他の団体や企業とのコラボレーションや適切な人材や資源の獲得等)、高レベル化・広範囲化を実現するかの判断に迫られることとなる。

二つ目は”needs”. 解決しようとする社会問題が、高レベルな価値提供を求めているか。また、広範囲での価値提供が求められているかを判断する。例えば、貧困問題は多くの開発途上国共通の問題であるという意味では、価値提供広範囲化のneedsがあると言える。

三つ目は”other organizations”=他者・他団体、同じ領域で他に活動している組織だ。選択した社会問題領域で、他に活動している団体はいるか、その団体が既に高レベル化、広範囲化のneedsを満たしているような事実はあるか等を検討する。先ほどの例のように、貧困問題そのものは広範囲化のneedsがあると言えるが、例えば貧困問題に悩むA国、B国、C国のうち、A国とB国は既に他のNPOが活動を広めている場合、自分たちが敢えてA国とB国を含めた広範囲で活動する必要はないかもしれない。

このように三つの要素を複合的に捉えて、4つの戦略方向性のうちどれを選択するかを判断していくのだ。この作業は後のソーシャルビジネスモデル策定の重要なインプットとなる為、しっかりと考えておく必要がある。

TCAP_Column_SB_Strategy_strategyexample_5

<続きは次のページへ>



1 2 3

Pages: 1 2 3

コメントを残す