
ソーシャルビジネスモデルの構築は困難である
社会起業家、NPOのスタッフ、企業のマーケティング担当者や新規事業開発担当者…
今後、あらゆる立場の、あらゆる職種の人がソーシャルビジネスを立ち上げる時代が来るだろう。
営利ビジネスと非営利活動の境界は曖昧になり、組織は社会価値と経済価値の両方を生み出すことが求められる時代。
ただ、ソーシャルビジネスモデルを作り上げるのは、そう簡単なことではない。
「どのように儲けるか」だけを考えればよかったビジネスモデル構築ですら難しいのに、「どのように社会問題を解決するか」と「どのように収益をあげるか」の両方を考えなければいけないソーシャルビジネスモデル構築の難しさは、推して知るべしである。
本稿では、そのソーシャルビジネスモデル構築における「難しさ」を排除しうる画期的なフレームワークを紹介したい。
ソーシャルビジネスにおける「難しさ」とは
フレームワークを紹介する前に、ソーシャルビジネスモデルにおける「難しさ」とは何かを今一度整理しておく必要がある。
TCAPは大きく分けて、以下の二つの課題があると考えている。
Ⅰ.ソーシャルビジネスモデルを設計・構築する上で、何を検討すればよいか分からない
Ⅱ.検討すべき要素は分かっているが、革新性・創造性に欠ける
特にⅠの問題は大きい。
既に述べたように、ソーシャルビジネスは社会価値・経済価値の両面から考える必要があるゆえ、当然検討すべき要素も多い。
多くの検討要素をあらかじめ理解しておかないと、自分自身が考えたソーシャルビジネスモデルに検討事項の漏れがないか分からないし、仮説検証もできない。
「Ⅰ.ソーシャルビジネスモデルを設計・構築する上で、何を検討すればよいか分からない」をもう少し分解すると、以下の二つの課題になる。
(Ⅱについては、次回以降に触れることとする)
1.検討すべき論点が不明確でソーシャルビジネスモデルの設計ができない
2.検証すべき仮説が不明確でソーシャルビジネスモデルの構築・検証ができない
1.論点が不明確
そもそもソーシャルビジネスモデルを設計するにあたり論点が不明確な場合、後々大きな問題を引き起こすことになる。
論点が不明確とはつまり、「何について考えればよいか分かっていない状態」ということだ。
極端なことを言うと、世界史のテスト用紙が配られたが、設問が一切記載されていない状況と似ている。
テスト用紙の一番上に「中世ヨーロッパについて答えよ」と書いてあるのだが、中世ヨーロッパの何について答えれば正解なのかがわからない状況を想像してみて欲しい。
このテスト用紙は手が付けようがないはずだ。中世といっても西暦何年ごろか、どの国について書けばいいか、そもそも中世ヨーロッパの文化について書けばいいのか、人物について書けばいいのか、戦争について書けばいいのかすら分からない。設問が無い、もしくは曖昧なテスト用紙に、答えの出しようがない。
テスト用紙を例にとると、「そんな状況はあり得ない」「問題のないテスト用紙を例にするなんて、極端でばかばかしい」と言われるかもしれない。
しかし、ソーシャルビジネスの世界に限らず、世の中の多くのビジネスパーソンが「設問の無い/曖昧なテスト用紙」に取り組んでいる、と言ったら驚くだろうか。
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