
パーティー×サステナブルが生み出す独自の市場セグメント
アメリカ・ニューヨークのブルックリン。この地に”サステナブルなパーティー”の実現を後押しする面白い企業がある。
パーティーと言っても色々あるが、ここでは仲間同士の打ち解けたパーティーを想像してほしい。
おいしい料理と飲み物、音楽とダンス。気心の知れた仲間。
だが、ちょっとテーブルに目を向けると、食べ残しや飲み残し、次々と無駄使いされる紙皿、紙コップ、紙ナプキン…(日本なら割り箸も?)
”パーティー”はどちらかと言うと、エコやサステナビリティとは遠いイメージではないだろうか。
気軽に楽しむことが優先され、パーティーにおけるゴミや無駄は見て見ぬ振りをされることが多いように思う。
ここに目を付けたのがSusty partyという企業だ。
Susty partyはパーティー用テーブルウェアの製造販売を手がける企業である。
Emily Doubiletによってアメリカ・ニューヨークで2009年に設立されたこの企業は、2012年にはCo-ownerにJessica HolseyをCo-ownerに迎え、つい最近もアメリカのTV番組シャークタンク(起業家が投資家にプレゼンテーションし資金調達する、アメリカ版「マネーの虎」)で資金調達に成功した、今注目の企業だ。
パーティー用テーブルウェアと言えば、冒頭に触れた通り、紙コップや紙皿、ペーパーナプキン等が思い浮かぶ。
Susty partyはこれらの製品を自社で企画開発し、自社ECサイトや小売店を介して販売している。
特徴的なのは、全ての製品が、susty=sustainableであること。
製品は全てcompostable(堆肥化可能)で、再生可能な資源(生育の早い植物や、持続可能性の観点でしっかり管理された森林)で作られており、その製造は視覚障害者を雇う北米の非営利の工場が担っている。
製品そのものが環境視点で持続可能であり、その製造過程においても、社会に貢献していると言うわけだ。環境に良い製品を、社会に貢献しながら作り出すビジネスモデルである。さらに特徴的なことは、製品がどれもスタイリッシュであるということ。環境や社会への貢献がベースにありつつ、もしそれが無くても売れるくらいの優れたデザイン性を有している。
パーティー×サステナブルという掛け合わせが、独自の市場セグメントとポジショニングを生み出しているのだ。
創業者のEmily Doubiletの両親はNational Geographic(ナショナル・ジオグラフィック協会)のフォトグラファーで、Emilyは幼いころから親に連れられて世界中を回っていた。その影響から自然に興味を持ち、Oberlin College(オーバリン大学)でEnvironmental Studiesを専攻。これがベースとなり、EmilyはSusty Partyを立ち上げることになる。
Jessicaは大学卒業後、ウォールストリートでクレディ・スイスのアナリストとして働いていたが、とあるパーティーでEmilyと知り合い、Emilyの事業に合流することに。
立ち上げ当初は、環境にやさしいパーティー用品を集めECサイトを運営していたが、2012年から自社ブランド製品の開発に取り組み、今では自社ECサイトでの販売に加え、ホールフーズマーケットなどに商品を卸している。年間売り上げは約100万ドル、今注目の企業だ。
Susty party、戦略転換の成功
Susty Partyの成功要因として、2012年に自社ブランド製品の開発に乗り出したことが上げられるだろう。
以下のように、ビジネス視点、ソーシャル視点双方で、戦略の転換がプラスに作用したことが考えられる。
ソーシャル視点
-自社製品開発により、自社製品が生み出す”社会・環境に対するインパクト”を増大させることに成功。これにより、より大きなソーシャルインパクトを生み出す基盤づくりに成功した。(他社製品の仕入販売では、製品そのものが生み出すソーシャルインパクトは自社のコントロール範囲外)
ビジネス視点
-他社製品とは異なるスタイリッシュな商品を開発。Sustainableでなくても売れる商品力をつけることができた
-自社ブランドにより、自社の提供価値に統一性を持たせることに成功。顧客から見てよりわかりやすく、伝わりやすくなった
-小売業から製造小売へ転換したことにより、製品の高付加価値化に成功。利益率が向上した
実際、Jessicaはあるインタビューで、自社ブランドを開発した理由として「世の中のエコなパーティーグッズは茶色や白ばかりで、カラフルでスタイリッシュな商品が無かった為」と答えている。
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