TCAP’S VIEW&INSIGHTS #008 / ソーシャルビジネスと競争戦略 – ソーシャルビジネスは”競争”すべきか | TCAP SOCIAL BUSINESS REVIEW online

TCAP’S VIEW&INSIGHTS #008 / ソーシャルビジネスと競争戦略 – ソーシャルビジネスは”競争”すべきか

TCAP, ビジネスモデル/戦略/組織
他の記事を見る(記事一覧へ)≫

TCAP_SBR_CompetitiveStrategy_eyecatch

ソーシャルビジネスは”競争”を無視できるか 
さて、競争戦略である。
 
本稿ではここまで、ソーシャルビジネスにおいては、「如何に競争に勝つか(もしくは避けるか)」という論点よりも、「如何に社会価値を最大化するか」が重要であると述べた。
そして「競争に勝つことでより多く儲ける」よりも、「ソーシャルビジネスを持続的かつスケーラブルなものにするために儲ける」という視点が同時に重要であることも説明した。
 
ソーシャルビジネスにおいて重要な論点が社会価値の最大化であるならば、競合と競争するよりも、むしろ協力したほうが良い、とする意見も多いのではないだろうか。確かに、不要な競争は避けて協力した方が、より早くより大きなソーシャルインパクトを生み出すことが出来るケースもあるだろう。
 
しかし、ソーシャルビジネスは”競争”の考え方を完全に無視しても良いのだろうか。
無視できないのであれば、どのように”競争”の考え方をソーシャルビジネスの中に取り込み、消化すればよいのだろうか。 
 
ここからソーシャルビジネスにおける競争について考えていくが、議論をシンプルにするために、今回はまず、以下の条件を議論の前提としたい。

<前提条件>
・あくまで社会価値最大化を最重要戦略ゴールとしたケースを想定
 (組織の状況やソーシャルビジネス立ち上げの背景次第では、社会価値最大化が最重要戦略ゴールとならない場合も多々ある。これについては別の機会に) 
・ソーシャルビジネス事業者同士が市場において対峙した場合を想定
 (ソーシャルビジネス事業者 対 営利企業のケースはここでは考えない)
 
初めに結論から言ってしまうと、戦略ゴールを達成する為に競争が必要であれば競争すべきだし、競争しない方が良いのであれば競争すべきではない。
 
他の組織とコラボレーションすることで社会価値が最大化されるのであれば、競争の必要性は低いと考えるべきではないだろうか。反対に競争することが社会価値最大化の近道であれば、競争すべきである。

例えば、社会問題領域において、生産性の低い組織があったとする。
その組織は当該社会問題領域において唯一の大規模NPOである。
知名度はあるが生産性が低く、革新性やビジネスセンスにも欠け、もはや社会価値がスケールしていく兆候はない。
 
あなたは当該社会問題領域で新たなソーシャルビジネスモデルを構築すべく起業した。
当初はその大規模NPOとのコラボレーションを志向したが、その非効率的なプログラム運営や革新性の低さ、モチベーションの低さに辟易し、関係を絶った。あなたは、その大規模NPOとコラボレーションせず、より優れたソーシャルビジネスモデルと生産性の高いプログラムを盾に競争する道を選んだ。

数年後、あなたの組織は当該社会問題領域で最大の組織となり、以前の大規模NPOは解体されることになった。

このケースでは、競争も正しい選択のうちの一つと言える。

ソーシャルビジネスでは、他の組織を含めた全体として如何に社会価値を最大化するかが重要であり、自身の組織がその中でどの程度のシェアを得るかは最重要課題ではない。
よって、社会問題視点で考えたときに、他者とコラボレーションした方がより社会問題解決に近づくことが出来るのであればコラボレーションを選ぶべきであり、ある同業者が社会問題解決の障害になるようであれば、競争することも厭わないというスタンスが重要だ。(もちろん、コラボレーションを選んだ場合の経済価値創出(売上高や利益率)はどうなるかを事前にシミュレーションした上で決断すべきなのは言うまでもない)
 
また、今回の例はあくまで社会価値最大化を最優先の戦略ゴールとしたベーシックなケースで検討したが、組織の置かれる状況やソーシャルビジネスを始める背景によっては、必ずしも社会価値最大化が最優先の戦略ゴールとはならない場合もあることには、念の為触れておきたい。(ソーシャルビジネスにおける、社会価値最大化と経済価値創出のバランスついては、また別稿で)

さて、前提条件でも示した通りだが、ここまでの議論は「ソーシャルビジネス対ソーシャルビジネス」の競争/コラボレーションについて述べている。
しかし世の中は、ここまでがソーシャルビジネスの領域、ここからが(営利)ビジネスの領域と明確な線引きがされている訳ではない。

当然、市場においてはソーシャルビジネス事業者と営利企業が対峙することもあり得る。
この場合の”競争”についてはまた、別稿で述べていきたい。

<続きは次のページへ「コラボレーション戦略の例」>



1 2 3

Pages: 1 2 3

コメントを残す