SIRUM / カリフォルニアで生まれた医薬品再配分のしくみ | TCAP SOCIAL BUSINESS REVIEW online

SIRUM / カリフォルニアで生まれた医薬品再配分のしくみ

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捨てられる年間5,000万ドル相当の医薬品
アメリカでは年間5,000万ドル相当の医薬品が、開封されないまま廃棄されているという。
一方で、アメリカのworking-age(15-64歳)の4人に1人が、薬にかかる費用が高いことが理由で、処方箋を受けることが出来ずにいるとのこと。
医薬品を廃棄することは、廃棄する側にとっても負担であるし、何より処方箋を受けられない患者がいる中で、未開封の薬が捨てられているというのは社会の大きな矛盾と言える。

この矛盾に目をつけ、解決策を提示したのが、SIRUMだ。
SIRUMはスタンフォード大学卒業生3名がアメリカ、カリフォルニアで設立した非営利組織で、アメリカ国内(現時点ではカリフォルニア、オハイオ、オレゴンに展開)において未使用の医薬品を効果的に再配分するサービスを展開している。SIRUMのウェブサイトによると、既に85,000人の患者に医薬品を届けることに成功しているとのこと。
 
SIRUMは医療施設、薬局等で開封されずに捨てられていく医薬品を、その医薬品を求める別の施設に流通させる仕組みを構築しつつある。
余剰な医薬品を再配分する仕組みを構築する為には、恐らく以下の二点が大きな障壁となる。

1. まず、未開封の薬を余剰に抱えている施設のニーズと、処方箋を求める医療機関・患者のニーズを如何に結びつけるかが問題となる。

2. そして、例え寄付する側とされる側のニーズを結びつけることが出来たとしても、如何に効率よく薬を運ぶかも問題だ。アメリカには医薬品の寄付を募り再配分する団体もあるが、「寄付側施設⇒団体⇒寄付先施設⇒患者」の流通経路となる為、最終的に医薬品を必要としている患者に処方されるにはそれなりのリードタイムがかかることになる。
 
1. ニーズを如何に結びつけるか
この問いへの回答は、「オンラインプラットフォーム」だ。寄付側は余った医薬品の情報を、SIRUMのシステムに登録し、その医薬品を求める施設を探す。寄付側施設は、そのシステム上でどの相手先に寄付するかを選択することが出来る。テクノロジーを使って、複数の二―ズを結びつける、典型的なプラットフォーム型サービスだ。
 
2. 如何に届けるか
医薬品というモノの性質上、寄付された医薬品が患者の元に届くタイミングには、ある程度の即時性が求められるはずだ。
(患者が出来る限り早く適切な医薬品を入手したいのは、当然だろう。)つまり、施設から施設へダイレクトに医薬品を輸送することができれば、最も効率性が高い。
しかし、これには壁がある。寄付側の施設に、送り状の作成、梱包する医薬品の種類や数量等の情報が載った納品書の作成、宅配業者の手配・・・と言った作業を強いることができるだろうか。そして、そのようなサービスが広く受け入れられるだろうか。
 
医薬品再配分のサプライチェーン再構築
SIRUMのシステムは、送り状、納品書の生成、宅配業者の手配までをサポートしている。寄付側は、システム上で寄付の相手先を見つけたら、送り状を貼り付け、後は宅配業者を待てば良い。SIRUMのシステムがロジスティクスの手配を徹底的にサポートすることで、施設から施設へダイレクトに医薬品を移動することが可能となっている。

一見すると、「オンラインプラットフォームによる寄付する側/される側のマッチング」がSIRUMの強みに見えなくはない。
しかし、実は寄付側のロジスティクス手配の手間を徹底的に省くことで、施設間のダイレクトな医薬品の再流通を実現したところが、SIRUMの成功要因ではないだろうか。ロジスティクスを起点に、医薬品再配分・再流通のサプライチェーンのモデルを作り上げたことがSIRUM最大の功績と言ってよい。
今後アメリカ全土にどのように広がっていくか、注目だ。


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