
小説を書きながらソーシャルビジネスの戦略を立案する、と聞いてピンとくる方はいるだろうか。戦略をストーリーとして考えるアイデアは以前から存在するが、実際に「小説を書こう」と考える企業の戦略担当はいないだろう。本コラムでは、あるソーシャルベンチャーにおける、「小説を書きながら戦略を立案する」プロジェクトの現場を連載でレポート。
「まるで小説を書くように」ではなく、「実際に小説を書く」戦略立案の現場を見ていく。
分析する前に小説を書こう
11月某日。
都内のとある会議室で、その会議は始まった。
会議の内容はある新規プロジェクトのキックオフ。
そのプロジェクトとはヘルスケア分野における、
新たなソーシャルビジネスを立ち上げるプロジェクトだ。
プロジェクトチームは、とあるヘルスケアベンチャーと、ソーシャルビジネス専門のコンサルティングファームTOKYO CREATIVE ACTION AND PROJECT(以下TCAP)のメンバーの混成チームだ。
ヘルスケア分野での新サービス立ち上げということで、
ビジネスモデルの検討はもちろん、市場性や競合の分析等、専門的な話が始まるかと思いきや…
「小説を書きませんか」
TCAPのコンサルタントが言い放った”場違いな”言葉に面食らうメンバー。
「分析的・論理的な思考で戦略やビジネスモデルを考えても、あまり楽しくないですよね。
だから小説を書きましょう。事業がどのように成功し、関わる人たちの人生がどのように変わっていくのか。それを小説にしたら面白くないですか。」
「このアプローチのポイントは、戦略を小説として考えることで、各人の創造性を発揮するところにあります」
「戦略をストーリーとして考える」というアイデア自体は、実はビジネスの世界では以前から存在している。
しかし、実際の戦略立案の現場において、「小説を書く」というアプローチを実践できたとしたら革新的と言えるだろう。
「戦略」と「小説」という一見全く結びつかない言葉を、頭の中で必死で結びつけるメンバー…
アプローチ自体はおもしろい、成功すれば素晴らしい、とのことで、
小説を書けば本当に戦略が出来上がるのか?という疑問を抱えつつ、プロジェクトはスタートした。
<続きは次のページへ「まずは登場人物と最終章から」>
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