
注目が高まる営利企業における社会的価値創出
ビジネスの世界において社会セクターへの関与は、近年重要な話題の一つとなっている。
例えば、DIAMOND Harvard Business Review(以下HBR)でも、以下のように、企業における社会的価値と経済的価値の両立を扱った論文が頻繁に掲載されるようになった。
・2011年6月号 経済的価値と社会的価値を同時実現する ”共通価値の戦略”
・2012年3月号 社会目的と経済価値を同時に追求する ”「共益企業」とは何か”
・2012年11月号 経済的価値と社会的価値を両立させる ”優れたリーダーは業績だけで満足しない”
さて、今回はこのHBR掲載論文のうち、2011年6月号の「経済的価値と社会的価値を同時実現する ”共通価値の戦略”」を見ていきたい。論文が発表されたのが2011年なので、社会貢献や企業の社会的価値追求に興味がある方は一度は聞いたことがある話題なはずだ。
この論文の著者はハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・E・ポーター教授。マイケル・ポーターと言えば、著書「競争の戦略」やファイブフォース分析、バリューチェーン分析を提唱したことで有名な経営学者だ。
このマイケル・ポーターが提唱するのは、論文のタイトルにもある「”共通価値”の創出」という概念。”共通価値の創出”とは、平たく表現すると社会的価値と経済的価値を同時に実現する、ということになる。ビジネスと社会問題を別次元で考えるのではなく、ビジネスの中で社会問題へ取り組むということだ。
”共通価値の創出”はCreating Shared Valueの日本語訳で、頭文字をとってCSVと略される。このCSVは、営利企業の社会貢献の形として多くの企業で取り入れられているCSR活動に代わる概念として提唱されている。
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