
ビジネスモデルキャンバスでは、以下の9つのブロックを要素としてフレームワークを定義している。先に述べた通り、ビジネスモデルキャンバスは、後述するTCAPのソーシャルビジネスモデルの土台となる考え方なので、ここで簡単に紹介しておきたい。
■顧客セグメント(Customer Segment)
ターゲットとする顧客のタイプを定義。「20~30代の男性会社員」など。
後述の価値提案を提供する対象となる。
■顧客にもたらす価値(Value Proposition)
顧客に対して、どのような価値を提供するかを定義。
具体的な製品・サービスの仕様ではなく、あくまで顧客のどのような課題に対して、どのような価値を提供するのか、というもの。
例えば、顧客はハサミという”商品が欲しい”のではなく、「簡単に物を切る」という”課題を解決したい”ということに、着目する必要がある。
■流通チャネル(Channel)
顧客に対して、どのようなチャネルで価値を届けるのかを定義。
ターゲットとした顧客セグメントに価値を届けるために最適なチャネルを採用する必要がある。
■顧客との関係(Customer Relation)
顧客とどのような方法で、どのような関係性を構築していくかを定義。
例えば、高級ブランド品を販売するのに、顧客とのコミュニケーションを電子メールで済ませることはない。恐らく、販売員が対面でサービスを行うはずだ。
■収益の流れ(Revenue Stream)
顧客に対して、価値提案を行った結果、得られる収入を定義。
どのような方法で収入を得るのか、薄利多売か、会員制か・・・など。
■主な活動(Key Activity)
事業を行う為の活動の中で、鍵となる活動を明確にする。
■主な資源(Key Resource)
事業を行う為に必要な経営資源のうち、重要なものを明確にする。
一般的には、人、モノ、金、情報、ブランド・・・などがある。
■パートナー(Key Partner)
事業を成功させる為に、どのようなパートナーと連携すべきかを定義。
■コスト(Cost Structure)
上の、主な活動、資源、パートナーによってかかるコスト構造を定義。
ビジネスモデルキャンバスではこれら9つのブロックを定義し、ビジネスモデルを設計していくことになる。9つのブロックは互いに関連しており、ある一つのブロックを変更すると、それに伴い別のブロックにも変更が生じる。
例えば、とある食品を販売するビジネスの顧客セグメントを「20代~30代男性会社員」から、
「40代主婦」に変更すると、販売チャネルは「駅の自動販売機、都市部・オフィス街のコンビニを中心とした販売」から、「住宅街付近のスーパーマーケット」へと変わるかもしれない。
また、このビジネスモデルキャンバスの特徴はビジュアル化にある。
ビジネスモデルキャンバスはビジネスモデルを一枚の図としてビジュアル化し、誰にでも簡単に理解が出来るようなツールとなっている。
ビジネスモデルを検討する際には、ポストイットやイラストを使って、キャンバスに向かって大人数でワークショップ形式でアイデアを出し合うなど、ビジネスモデルの立案やキャンバスの運用方法にまで言及されているのが、この本の特徴だ。
特にイラストを使ってキャンバスの9つのブロックを埋めていく手法は、まさに右脳的な思考をビジネスモデルに持ち込むことに成功していると言って良い。
これまで、ビジネスの世界ではどちらかというと左脳的、論理的な思考が強く求められてきたことを考えると、右脳的思考を持ち込んだビジネスモデルキャンバスは革新的だ。
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