ソーシャルエンタープライズって何? – 社会貢献に熱心なsalesforce.comと「ソーシャルエンタープライズ」を巡る騒動 | TCAP SOCIAL BUSINESS REVIEW online

ソーシャルエンタープライズって何? – 社会貢献に熱心なsalesforce.comと「ソーシャルエンタープライズ」を巡る騒動

ビジネスモデル/戦略/組織
他の記事を見る(記事一覧へ)≫

TCAP_ブランドピクチャー_Others_18_悩み・問題

セールスフォースと「ソーシャルエンタープライズ」を巡るちょっとした騒動
今回は、昨年12月に起こったある興味深い出来事を紹介したい。

セールスフォース・ドットコム(以下セールスフォース)という会社をご存じだろうか。
英語でSalesforce.comと表記するこの会社は、いわゆるクラウド型の顧客管理・営業支援アプリケーションサービスを提供している。
この会社は1999年、マーク・ベニオフ(前オラクル幹部)によってアメリカで設立され、5年後の2004年にはニューヨーク証券取引所に上場。
日本では2000年に株式会社セールスフォース・ドットコムが設立されている。

そんなセールスフォースが昨年12月にこんなプレスリリースを発表した。
「セールスフォース・ドットコム、「ソーシャルエンタープライズ」の商標登録申請を取り下げ」
セールスフォース・ドットコム プレスリリース

これは一体どういうことか。

プレスリリースの要旨はこうだ。
セールスフォースはかねてから、”企業と顧客、パートナー、従業員をこれまでとはまったく違う新しい形で結び付けることを可能にするソーシャルクラウド・テクノロジーとモバイルクラウド・テクノロジーの力”(プレスリリースより)を「ソーシャルエンタープライズ」という言葉で普及させてきた。
そして2012年初め、セールスフォースはこの「ソーシャルエンタープライズ」と言う言葉を、商標登録申請したのだ。
これに対して、社会貢献分野から懸念の声が挙がったというのだ。

もともと社会貢献分野では、社会問題の解決を目的に収益事業を行う組織を営利・非営利問わず「ソーシャルエンタープライズ(社会的企業)」と呼び、このソーシャルエンタープライズを創業する起業家を「ソーシャルアントレプレナー(社会起業家)」と呼ぶことが多い。

そんな中、セールスフォースが社会貢献分野のそれとは異なる意味で、「ソーシャルエンタープライズ」という言葉を商標登録したことが、
この騒動の発端というわけだ。

実は社会貢献に熱心なセールスフォース
セールスフォースはそもそも社会貢献に熱心な企業で、「1/1/1モデル」と言って、
就業時間の1%、製品の1%、株式の1%をNPOや非営利団体に提供する活動を行っている。
セールスフォースの社会貢献

このような企業だからこそ、なおさら社会貢献分野に混乱を生むことは本意ではないはずで、
創業者のマーク・ベニオフはプレスリリースの中で、このように述べている。

「当社では創立以来、社会貢献活動を広く支援しており、社会貢献の分野に混乱を起こすことは、まったく意図するところではありません。このため、関係各所からのフィードバックを検討した結果、当社は “ソーシャルエンタープライズ” の商標登録申請を取り下げ、今後当社のマーケティングにおいてもこの言葉の使用を取り止めることといたしました。」

これに対して、Social Enterprise UKという団体は”Victory in global campaign to protect social enterprise”というメッセージをホームページ上に掲載。(Social Enterprise UKはイギリスの団体で、ソーシャルエンタープライズ・アワード等様々なソーシャルエンタープライズを支援する活動を行っている)

Social Enterprise UK

これで騒動は収束。昨年12月の出来事だった。
セールスフォースが潔く申請を取り下げたことは評価できるし、
これを機に、逆にセールスフォースが社会貢献に熱心な企業であることが、多くの人に伝わったのでは、と思う。
 
この出来事を機会に、是非「ソーシャルエンタープライズ」という言葉を覚えてほしい。
日本においては、まだ多くの人々に認知されている言葉とは言えないが、近い将来、社会起業家が増え、
社会貢献に対する意識が一層高まれば「ソーシャルエンタープライズ」が重要な言葉として認知されるようになるだろう。
 
多くの営利企業が「当社は今後3年でソーシャルエンタープライズへの転換を図る」と、中期経営計画に書くような時代が来るかもしれない。
(文/五十嵐裕一)


コメントを残す