IDEO / Open IDEOに見る新たな社会問題解決の在り方 – コラボレーションの次は”共創”で新たなアイデアを | TCAP SOCIAL BUSINESS REVIEW online

IDEO / Open IDEOに見る新たな社会問題解決の在り方 – コラボレーションの次は”共創”で新たなアイデアを

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”co-creation(共創)”が社会問題解決の新たなキーワード
近年注目を集めるキーワード「共創」。英語では”co-creation(コ・クリエーション)”.
一般的には商品・サービス開発やイノベーションにおいて、多くの消費者を巻き込み、新たなアイデアを創出する取り組みを言う。
 
同じ様な意味合いでオープンイノベーションという言葉を聞いたことがある人もいるだろう。
オープンイノベーションは、カリフォルニア大学バークレー校のヘンリー・チェスブロウが提唱した考え方で、簡単に言えば、自社の能力やノウハウに閉じた世界ではなく、他社や外部の能力・技術、ノウハウを用いて新たな商品、ビジネスモデルを生み出すことを言う。
  
Co-creationは(あくまで筆者の理解では)オープン・イノベーションのうち、特に消費者を巻き込んだ取り組みを言う。
(co-creationはあくまでオープンイノベーションの概念に含まれる認識。一旦本稿ではこの認識で話を進める)
 
さて、そんなco-creationを社会問題の解決に活用する事例がある。
アメリカのデザインファームのIDEOが2010年に立ち上げたOpen IDEOというプラットフォームだ。
Open IDEO
 
Open IDEOについては、既に様々なメディアで取り上げられている為、知っている人も多いはずだが、TCAPのコラムではこれまで取り上げたことはない。とは言え、この革新的な仕組を取り上げないわけにもいかないので、Open IDEOについて知らなかった人や名前くらいしか聞いた事の無かった人向けに、今回改めて取り上げたいと思う。
  

IDEOという会社はアメリカのシリコンバレーに本社を構える世界的に有名なデザインファームで、製品、サービスのデザインに留まらず、マネジメントコンサルティングにも注力している。
 
IDEO社そのものについては、ここでは詳しく述べないが、IDEO社トム・ケリー著の「発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法(Tom Kelley, Jonathan Littman)/早川書房」は面白いのでぜひ。
また、IDEOのCEOティム・ブラウンや、デイビッド・ケリー、ポール・ベネットはTEDでもプレゼンテーションしているので、こちらも是非ご覧いただきたい。
 
興味深いOpen IDEOの仕組み
さて、そのIDEOが立ち上げたOpen IDEOは、社会問題解決の為のオンラインプラットフォームだ。
Open IDEOは簡単に言うと、ユーザーがアイデアを出し合って提示された社会問題の解決策を考える、というサービス。
 
Open IDEOの社会問題解決のプロセスは次の通り進む。

1.”big question”の提示
2.INSPIRATION
3.CONCEPTING
4.APPLAUSE
5.EVALUATION
6.REALIZATION

 
まず、Open IDEO上で挑戦すべき社会問題がユーザーに提示される(1.big questionの提示)。
例えば、”How might we all maintain wellbeing and thrive as we age?”とか、”How might we create healthy communities within and beyond the workplace?”といった具合に。
 
こうした問題を提示するのはchallenge sponsorと呼ばれる団体や企業で、例えば”How might we all maintain ~?”はMAYO CLINICという非営利組織がchallenge sponsorだ。
 
つまり、何か解決したい社会問題を持っている団体・企業が、ユーザー達にその解決策を考えてもらうべく、Open IDEO上で問題を提示するということ。スポンサーがある社会問題を解決する為に、自分たちの組織に留まらず、広く外部に向けて新たなアイデアを募るのだ。
 

さて、取り組むべき問題が提示されると次のプロセス(2.INSPIRATION)へ進む。
ここでは、ユーザーたちがその問題に関連するケーススタディやツール等を投稿していく。
この様々な投稿からインスピレーションを得ることで、新たな問題の解決策を生み出すベースを作っていく。

 
次のプロセスは3.CONCEPTING. ここではインスピレーションを基にユーザー達が問題を解決する為のアイデアを投稿していく。アイデアが投稿されるとユーザー同士が互いのアイデアを読み、気に入ったアイデアを4.applause(拍手・称賛)する。
このapplause(facebookの”いいね”みたいなもの)がより多く集まったアイデアが良いアイデアということになる。

 
このapplauseを基に、アイデアが絞られ最終的に5.EVALUATIONのプロセスを迎える。
ユーザー達が各アイデアを評価し、コメントしていくプロセスだ。
最終的にこのユーザーからの評価を基にスポンサーが、ベストなアイデアを選出する。
選ばれたアイデアは6.REALIZATION(実現)のプロセスまでOpen IDEO上でストーリーが共有されることになる。
 
コラボレーションからco-creationの時代へ
実際にOpen IDEOに登録して中を見てみると、しっかりとこのプロセスが機能しているから驚きだ。
“How might we all maintain ~?”の問題には、317のインスピレーション、133の新たなアイデア(concept)が投稿されている。そして、最終的には6つのアイデアが選出されたようだ。

Open IDEOはオープン・イノベーション、co-creation(共創)が社会問題解決の領域でもしっかりと機能する事を示す好例。特に”社会問題の解決”は、社会全体の利益であり公益だ。社会全体に利益があることを、社会全体で考える(共創する)ことは、むしろ当然の流れなのかもしれない。

今、NPOが個別に社会問題に対処する時代は終わり、企業や行政、他のNPOとコラボレーションする時代に入っている。さらにこれからは、Open IDEOが示す通り、NPO、企業、行政に留まらず、生活者とのco-creationにより、社会問題を解決する時代が到来するはずだ。

社会問題解決を担うNPO、企業、行政、社会起業家達は、自らの事業に如何にco-creationの考え方を取り込むか、真剣に考えるべき時に来ている。
(文/五十嵐裕一)


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